サンタクロース ≒ なまはげ!?

2019.01.07[Mon] 00:00

12月23日の放送番組から気になった一部の内容を紹介します。

ゲスト ミュージアムプロデューサー 砂田光紀 様

益田:今日はクリスマスのイルミネーションが輝いているということで、クリスマスにまつわるお話をミュージアムプロデューサーの砂田光紀さんをお招きしてお話を伺います。

砂田:よろしくお願いします。

山本:今日はクリスマスについて伺っていますけど、サンタクロースというのも当時一緒に入って来たんでしょうか?

砂田:サンタクロースがいつ入ってきたのかも詳しくわかっていないんですよね。全世界的かというとそうではなくて、クリスマスイブにプレゼントを持ってくる人は、実は男性とも限らない、国によっては魔女が持って来たり、いろいろな違う名前の男性が持って来たりとか、真っ赤な服を着ているとも限らない。しかしながら必ず誰かがプレゼントを届けてくれたり、やって来ると。

山本:年末は必ず誰かが来るんですね。

砂田:まあ、そういう例は多いです。じゃあなぜかっていう話になるんですけど、突飛な話をしますが、日本で大晦日にやって来るものって知っています?紅白だけじゃないんです。例えば東北秋田とか行くと、なまはげがやって来ますでしょ?今はいろんな時期に冬になると現れる観光用のなまはげもありますけど、本来的には大晦日で。

九州で言うと鹿児島県の甑島という島があるんですけど、この島ではトシドンという神様が子どものいる家にやって来るんですよ。この神様がちょっと怖くて、首無し馬に乗ってくるというんですよ。すごい恰好をしています。鬼みたいな面をかぶって、ソテツの葉っぱで飾ったりとか、それで鼻が高かったりとか、牙が出ていたり、集落によっていろんなかたちがあるんです。その神様が「オラー!」とか言ってドンドンドンと玄関を叩くわけですよ。それまで紅白を楽しく見ていた家族団らんにいきなり。それで親も電気を消しちゃったりなんかして。「オラー、○○はいるか?」って名前もばれているという。なまはげと全く同じですね。ただ、なまはげは包丁を持っていますけど、トシドンは刀を持っています。もちろんフェイクの刀ですけど。これがやって来て、「ほらここに正座しろ」「座り方がなっとらん!お前らは」とか言い始めるわけですね。例えば「お前は最近ゲームばかりして全然勉強していないだろう」とか「昨日妹を泣かしたな」とか言うんですよ。ドンピシャなんですね。子どもの方は完全にびびり上がってしまったところに、ゲーム機も取り上げてしまったりするんですね。それで子どもたちはもう泣きじゃくっている状態で、そこで「よし!一曲歌え!学校で習っている歌を歌え!」とか無理難題を吹っ掛けるんですが、子どもたちは必死で対応するんですね。親は笑いながら後ろで見ているんですけど、たまにトシドンの使いに扮した近所の人たちが竹ぼうきで壁をガサガサってやって一緒に脅したりして。それは単に子どもをいじめているわけではなくて、トシドンは天の上からいつも見ているぞ、と言うわけですね。来年もまた来るからねと言われると、子どもたちも何が何だかわからなくなって「ハイ」とか言っちゃうわけです。「じゃあわかった、後ろを向け」「お母さんの言うこと、おばあちゃんの言うことをちゃんと聞け」と言って、後ろを向いたらトシドンが「今からお前に良いものをあげるから」と、背中に大きな鏡餅を背負わせるんです。それの名前が何と言うと思います?トシドンは言うわけですよ、「これをお前に渡すから、これを食べれば一年風邪を引かずに健康でいられる」と。

山本:お年玉?

砂田:そう、「トシダマ」っていうんですよ。皆さんね、お金を渡せば良いってもんじゃないんですよ。子どもたちに、一年間元気に生きていけるエネルギーを渡してくれるんですよ。そして、また来年も来るからねという一言を残してトシドンは首無し馬に乗って去っていくという。

山本:もともとお年玉というのはお餅だったんですか?

砂田:全部がそうとは申し上げませんけど、そのお年玉という言葉が意味するのは全く同じものだと僕は思っています。そして、なぜそんなことを言うかというと、先程申し上げた秋田と鹿児島、この離れたところに大晦日の晩にやって来る神様。全国には、神様は現れなくても、実は仮面来訪神、あるいは仮面じゃないかもしれませんけど、来訪神が大晦日の晩にやってくるという伝承自体は日本中にあるんです。ということは、この習俗は日本中にあったと考えるのが柳田国男的な民俗学の考え方なんです。

仮面来訪神に限らず異形の来訪神が特に大晦日にやって来るのには実は事情がありまして、来訪神がやって来るときって、時間の流れがすごく不安定になっているときなんですよ。私たちは一年中漫然と過ごしている気がしますけど、よくよく考えてみたら春夏秋冬で暦ができていて、大晦日の晩は一年が終わって次の一年に突入する境目なんですね。境界というのはとにかく魔物が侵入しやすい不安定な時期という考え方が世界中にあります。ですから、その不安定な時期は本当のことを言うとみんな家でじっとしていなければならない、そこにつけ入るように悪い神様がやって来たり、あるいは悪くもない神様もやって来るんですけど、そこで人間悪いことしてないか、ちゃんと暮らしているかっていうふうに覗いていくんですよ。そこに悪い霊が入ってくることも無いとも言えないので、皆さんがいろいろな飾りつけをして魔物を除けるんです。そういった例は九州内各地で見ることができるんですけど、お正月の門松とか、あるいはちょっと時期がずれますけど、元々本来的な意味は似ているんですが、節分の焼嗅(やいかがし)とか。軒先に柊の葉っぱと、昔は鰯の頭を刺していたんですけど、要は、鰯は臭いがしますよね、特に時間が経つと腐ってきたりして。その力と、柊の葉っぱのトゲトゲが、魔物が嫌がるものなんですよ。さあそこで考えていただきたいんですが、皆さんクリスマスに玄関先に何か丸い物を下げませんか?

山本:リース。

砂田:リースって柊の葉でできていて、そこに赤い実がついていますよね?そこが共通するわけですね。だからクリスマスツリーも針葉樹を使いますよね。モミの木にデコレーションしてキラキラと輝かせますよね。門松は、今はああいう形で竹を鋭く切ったものが3本に、松と赤い実が飾られて、皆さん縁起物だと思っていますけど、一番不安定な時間帯をそれで守っていると考えられます。

益田:除夜というか。

砂田:年取りの晩というのが正解なんですが、その時にしめ縄を張って、昔は。要は、魔物はここまでですよと、良い物しか入れませんよということで、橙がぶら下がっていますよね、適当にこれを持って帰ってくださいと。そこに炭がぶら下がっていたりしますが、炭は全てのものを清浄なものにするものですね。だから魔除けのシステムとしての機能が実は門松とかにはたくさんあるんです。正月の話はまた置いておいて、とにかくクリスマスと日本の正月飾りとかと、あるいは節分と非常に合致した部分があります。それとサンタクロースですけど、サンタクロースはよく得体のわからない人ですよね。でも子どものもとにやって来る、そしてプレゼントを置いていくところってトシドンとかと同じですよね。

山本:本当ですね。でも着ているものは違いますよね?

砂田:トシドンは白で作った蓑みたいなものを体中に付けていたりとか、あるいは萱とか藁とかみたいなもので草の衣を身に着けていたりして、自然のものを身に着けています。

山本:でもサンタクロースは赤くて可愛い服ですよね?

砂田:サンタクロースの赤の話も諸説ありますよね。某飲料メーカーのキャンペーンで赤くなったんじゃないかとか、そういう話もありますけど、こればかりはよく分からなくて。しかし赤だったり青だったり国によって象徴する色があるんですね。とても面白いのは、なまはげも天の上から見ている神様で、怖い神様だけど子どもたちを守ってくれる、我々人間にとっては実は味方の神様ですよね。サンタクロースも同じように家々を回って貧富の差を問わず子どもたちにプレゼントしてくれる神様、つまり子どもたちに何かを置いていくわけですよ。非常に共通した要素が多くあって、これは偶然でも何でもなくて、やはり年の変わり目に対する発想というのは世界的に共通だったのではないかと文化人類学的には考える人も多々いらっしゃいます。

益田:年の変わり目を意識するということ自体が、そういうことなんでしょうね。清めて。

砂田:そうですね。何とか一年過ごせたよと、次の年もまた無事であってほしいなと、スムーズに年が入れ替わってほしいというのは、昔から西洋東洋問わずあったのかなと思います。

DJ紹介

  • 益田啓一郎
  • masudakeiitiro
  • 博多で企画執筆業。古地図や古写真の研究を通じて地元福岡だけでなく九州各地の歴史文化に興味精通。趣味は演劇鑑賞&音楽ライブ、ブラタモリ案内人。

  • 山本真理子
  • Mariko Yamamoto
  • 誕生日:9月20日 乙女座
    血液型:O
    出身地:長崎
    訪れたことのある国:アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、タイ、香港、済州島
    特技:おいしいお茶を入れること
    好きな音楽:ソフトロック

    LOVE FMに戻ってこれました!HAPPY!

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